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空挺ドラゴンズとは

天空を駆ける龍が存在する世界。そんな世界において龍を狩り、加工して売りさばき、肉を食らい、また次の龍を求めて空を旅する生活を生業としている者達がいました。<龍捕り(おろちとり)>。龍に立ち向かうというまさに命がけと言えるその稼業に自ら身を投じ、東へ西へと世界中の空を飛びまわる<捕龍船クィン・ザザ号>の乗組員たちの活躍を描いた、壮大なグルメファンタジー作品です。

龍の味に魅せられた男

広大な空に浮かぶ1隻の飛空挺。その艦首から延びるロープには、一頭の龍が繋がれていました。雲に逃げられると厄介なため、早く仕留める為の方法を模索する乗組員たち。
ですがその中で、只一人だけ全く的外れな意見を述べる人物がいました。「暴れすぎると肉の味が落ちる」その言葉を残し、あろうことか龍の背に取りついたその人物は、たった一つの呟きを残し、一撃の元に龍を仕留めたのでした。「うまそう」と。

その人物の名は『ミカ』。捕龍船<クィン・ザザ号>の乗組員です。捕龍船とは龍を捕え、油や肉に加工した上で町で売りさばき、生計を立てている者達の事ですが、ミカはその中でも特に龍の肉の味に魅了された男でした。

皆が町で商売をしている間にも「もったいない」と言いつつ解体を終えた龍の骨に付いている肉をつまみ食いするミカ。そしてそれを注意する新人の『タキタ』。

単なる食いしん坊ではなく、「生で食べた感じだと、ステーキで食うのが良さそうだった」等と発言するあたり料理人的な見地から龍という存在を見ているようです。

龍捕りにまつわる噂

この日も仕留めた龍を売りさばくため、とある市へ降り立ったクィン・ザザ号の面々。
ですが、商売は順調だったにも関わらず、市の人々は一行がこのまま逗留する事に対しては難色を示すのでした。その理由は「捕龍船を泊めた市には龍が落ちる」という噂。

それに真っ向から反発する乗組員の『ジロー』でしたが、市の裁定が覆る事はありませんでした。

そんな中、龍が出たとの一報が市にもたらされます。途端に手の平を返したように助力を請う市の面々達。その態度に再び怒りを募らせたジローでしたが、「仕事だ」と諭すクルーの言葉に渋々ながら自分の意見を飲み込みます。そしてその一方で「今度はどんなヤツかな?」と少年のように瞳を輝かせるミカの姿があったのでした。

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ミカの信念

現れた龍は冒頭にてミカが仕留めた龍の母親でした。それを何と<匂い>で看破するミカ。クィン・ザザ号に襲い掛かってくる母龍の「子供の仇討ち」という構図に思わず「かわいそう」という感情を抱いてしまう新人クルーのタキタでしたが、ミカは強い口調でこう諭します。「龍は一方的に狩られるような相手じゃない。殺す覚悟のないヤツは死ぬぞ」と。

子供を殺された母龍の猛攻は凄まじく、通常より殺傷能力の高い電気矢(スタンランス)の使用が提案されます。ですが、それを「味が落ちるから使わない」と制止するミカ。そしてそれに続く「捕るならできるだけ美味く捕ってやるべきだ」という言葉からは、単なる食料としてではなく、龍という存在に対する畏敬とも言うべきミカの信念が垣間見える瞬間でした。

結局命の瀬戸際に立たされ、電気矢の使用を余儀なくされたミカ。仕留めた母龍の肉は電気矢の影響で味が落ちていたと思われますが、それを貶める事無く、敢えて「ん゛まい」と絞り出したミカのコメントからも龍に対する敬愛が伝わってくるようでした。

ミカを取り巻く仲間達

物語はミカを中心として進んでいきますが、本巻ではクィン・ザザ号に乗船する個性的な仲間達とのエピソードが繰り広げられます。何故か借金をしてまでクィン・ザザ号の一員に名を連ねた新人クルー、タキタ。

捕龍の腕は艦内随一と言われながら、何故龍を追い殺してまでクィン・ザザ号に乗り続けているのかを自問する『ヴァナベル』。

自分や母親を置き去りにしたまま旅を続けていた龍捕りの父を敬遠し、その半面尊敬もしているジロー。

それぞれの内面は次巻以降に掘り下げられていくと思いますが、形は違えど、龍という存在に魅せられている事が如実に伝わるエピソードとなっています。

そしてそんな彼らを、ミカが仲間として大切に思っている事が伝わるのが第5話となる<空中海賊とパストラマ>。大量の武器で武装した空中海賊に襲撃され、負傷したタキタ。その事に怒ったミカは何と単身で空中海賊の船に乗り込み、これを制圧してしまいます。ついでに食料までも頂戴し、「どっちが海賊だかわからない」と仲間達から苦笑交じりに称賛されるミカでしたが、普段飄々としているミカの、心の熱さが感じられるエピソードでした。

天空を雄大に駆ける、至高の存在<龍>。その存在に、その価値に、そしてその味に魅了された者達は、今日も新たな空へと舞い上がります。これからどんな龍が登場するのか。
ミカを軸にした、クィン・ザザ号のクルー達との人間模様はどうなっていくのか。そして手に入れた龍の肉は、どんな調理法で絶品料理へと生まれ変わるのか。龍を求め、龍を狩り、龍を食すグルメファンタジー<空挺ドラゴンズ>。この先の展開から目が離せない作品です。

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