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龍の壁掛け

捕龍基地として栄えた有数の港市<クオーン市>。仕留めた龍の商いと、母船である捕龍船クィン・ザザ号の修理も兼ねてこの市へやってきたミカ達一行。

この市で初めて龍の解体に携わり、その余韻に浸っていた新人乗組員のタキタは、市のある場所に向かうというミカに同行する事になりました。その場所とは、千剖士(せんぼうし)ウラ爺の居宅。千剖士とは古くから龍を解体、加工して暮らしてきた一族の事であり、一族の出ではないにしてもミカが仲間として迎え入れられているという事実をタキタは知るのでした。

そしてタキタを驚愕せしめたのは、壁に掛けられた無数の壁掛け(タペストリー)。何とそれは、一枚一枚が個別の龍の革から作られており、古いものは捕龍船が生まれるよりずっと以前のもの。まさに龍捕りの歴史そのものと言っても良い景観、そして今も脈々と受け継がれる壁掛け作りの技術に、タキタは子供のように目を輝かせるのでした。

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ジローとカーチャ

ミカとタキタがウラ爺の居宅を訪れている間、市には巨大な龍を抱えた捕龍船が入港していました。「超大物だな」呑気にその巨大さに見入るギブス達でしたが、その頃酒場ではちょっとした騒動が持ち上がっていました。

一人の少女にちょっかいをかけたある龍捕りの態度にジローが激昂し、違う船同士の大規模な喧嘩に発展してしまったのです。その喧騒の隙に、ジローの手を引いて外に連れ出したのは喧嘩の発端となった例の少女。カーチャと名乗ったその少女は素直にジローに礼を言い、自分が売られてきてから一度もこの市を出た事がないこと。そして明後日には年に一度のお祭りが開かれる事をジローに告げるのでした。

暴れ龍

喧嘩が終息の時を迎え、ボロボロになって帰還してきたクィン・ザザ号のクルー達。そんな彼らを待ち受けていたものは、喧嘩など比にならない規模の大事件でした。先だって運び込まれた巨龍が実は息絶えておらず、一機の捕龍船を破壊していたのです。

駆けつけてくるミカとタキタ。そして破壊された船の乗組員が、先程の喧嘩相手だった事が判明したのも束の間、巨龍が繰り出す強烈な熱線が、周囲を薙ぎ払いました。人々が逃げ惑う中、巨龍が怒っているのではなく、<怯えている>事を看破するミカとウラ爺。そしてミカはウラ爺に問うのです。「あいつは食えるのか?」と。

手負いのまま龍を持ち込んだ喧嘩相手の乗組員と共同戦線を張り、<終わらせる>為に、強大な存在に立ち向かう龍捕り達。「ちゃんと獲ってちゃんと食う」と言いながら槍を繰り出すミカ。龍の体によじ登り、決死の一撃を撃ち込むジロー。そしてクィン・ザザ号を巨龍に体当たりさせるという操舵室の決断により、戦いは遂に終焉の時を迎えたのでした。

別れと旅立ち

戦いから一夜明け、市では仕留めた巨龍の解体作業が行われていました。騒動の結果お祭りは中止になってしまいましたが、お祭り用に用意していた食材と龍の肉を使い、炊き出しが行なわれます。市の人々や、クィン・ザザ号の面々、そして違う船の乗組員も一緒になって炊き出しを囲み、談笑する光景。それを見たジローとカーチャは「まるでお祭りみたいだね」と笑いあうのでした。

その翌朝、ジローはカーチャを密かに呼び出しました。どこに行くのかと不審に思うカーチャと共に向かったのは、空の上。一連の騒動の謝礼金として入手したオートジャイロを使い、市から出た事がないというカーチャを何物も遮るものがない広大な世界へ、連れ出してあげたのでした。旅立ちの時が近い事を告げるジロー。そして「俺と一緒に船に」と言いかけたジローを制するカーチャ。その顔には、共に羽ばたきたいと思う希望と、それを上回る「もはや故郷と言っても良い場所や人を残してはいけない」という葛藤が滲んでいました。

かくして、クィン・ザザ号はクオーン市を後にします。出立前、カーチャに髪を切ってもらったジローの姿に驚くタキタと「いろいろあるのよ男の子にも」と諭すヴァナベル。
カーチャとの出会いの折には「あんた達みたいなヤツのせいで、龍捕りが悪く言われるんだ!!」と感情の赴くままに怒りをぶつけたりと、真っ直ぐな中にも青臭い部分を持っていたジローでしたが、捕龍船の乗組員としても、そして男としての成長も見られたように思う本巻でした。

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