◆前回のあらすじ◆
ユヅは12月31日が誕生日。大正11年12月31日の今日で15歳になりました。これでいつでも珠彦様のお嫁さんになれる、と。
珠彦は今までの生い立ちから正直な気持ちを口に出せず、ついつい不安に感じていることを語ってしまいます。そんな珠彦に温かい言葉を投げかけるユヅ。珠彦は思わず、ユヅに接吻してしまいます。
お互いモジモジと恥ずかしがる中、運命の大正12年が明けるのでした。
◆大正処女御伽話◆
1巻
2巻(・・・・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話)
◆登場キャラクター◆
志磨 珠彦(しま たまひこ) お金持ちのお坊ちゃん。交通事故で母親と右腕の自由を失う。父親は息子を死んだものと扱い、千葉の田舎の別荘に追いやられてしまう。父親は珠彦の面倒を見させるため、お金で買ってきた『夕月』という少女を将来の嫁としてあてがう。 |
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夕月(ゆづき) 借金のかたとして売られた少女。珠彦の嫁として志摩家に買われる。天真爛漫な性格で、料理など家事全般をこなしつつ、手の不自由な珠彦の面倒を見る。 |
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志磨 珠子(しま たまこ) 夕月より2つ年下の珠彦の妹。頭は良いが性格がきつく、誰にでも悪態をつくとろこがある。本当は寂しがりや。神戸で医者を目指すため勉強している。 |
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綾(りょう) 村に住む珠彦と同い年の少女。家が貧しく色々と悪いことをやらされることもある。弟や妹たちにはとても優しい良いお姉ちゃん。 |
勉強を教えて
朝、顔を洗っている珠彦とユヅ。
草むらからリョウの弟2人が現れました。
『また勉強教えておくれー』
というのです。
以前、リョウの家で教えた時、珠彦の勉強の教え方がとてもよかったと感じていたようですね。
せっかくここまで来たのだから・・・と、珠彦は気が進まないものも、勉強を教えてあげることにしました。
リョウの弟3人だけだと思いきや、後ろにはもっと多くの村の子供たちもいました。坊ちゃん(珠彦)の勉強の教え方がうまいということで、皆教えてもらいたくてやって来たのです。
子供たちは教えてもらいたくてワクワクです。
何故かユヅもワクワクです。
珠彦は勉強の指導を開始します。
珠彦の授業
◆国語
綴方(つづりかた=作文)のやり直しを言われた子の相談。
『君の猫の姿形がどうなのかを述べるといいな』
『名前もあると言い』
『あと「イヒマシタ」ではなくおっしゃいましたと綴ろう』
『目上の人だからな』
◆理科
雨ってどうして降るのー?
『飴は大気中の水蒸気が凝結して水滴となり』
『空中にういてられなくて落ちてくるもので・・・』
◆算術
『火鉢は3円で、火箸は30銭である』
『甲の店では火鉢を買えば火箸を進呈』
『乙の店では火鉢と火箸を買えば一割引き』
『どの店で買う方がいくら安いか』
子供たちは甲の店の方が安いのではと予測します。
そこで珠彦が計算方法を教えて解いてみると・・・乙の店の方が3銭安いことが分かりました。
子供たちは、坊ちゃんと考えると難しい問題がカンタンになると大喜びです。
そして、それを陰から覗いているユヅもとても嬉しそうでした。
家に帰る子供たち
『楽しかった』
『ありがとう』
『また来るね』
そう言って、子供たちは帰っていきます。
困ったものだなぁと言いながらも、珠彦もとても楽しかったようで笑顔です。
ユヅもそんな珠彦の顔をみれてとても幸せそうでした。
しかし、帰り際の綾太郎の顔が暗く、珠彦は少し気になってしまいました。
差し入れにやってきたリョウ
数日後、また子供たちが勉強を教えてほしいとやってきました。
坊ちゃんの勉強の教え方がうまいからという子供たちに、珠彦は顔を赤らめて照れてしまいます。
子供たちから慕われる珠彦を見て、陰からユヅは嬉しそうに眺めます。
そこへやって来たのが、先日、珠彦とユヅをからかいに来たリョウ。
珠彦とユヅは警戒しますが、リョウは気にせず、ユヅを引き連れて昼食の準備を始めます。
珠彦の授業
リョウは先日、ユヅに『自分は珠彦の妾(めかけ=愛人)』という嘘を言ってからかいました。
その時に、騙され目に涙をためながらも、とても気丈に振る舞っていたユヅを見て、リョウはユヅのことを気に入ってしまったんです。
『アタシたち珠彦の妻と妾で』
『仲良くできそうじゃな~い?』
などと冗談を言いながら、リョウはユヅに悲しい思いをさせてしまったことを謝るのでした。
昼食の時間
ユヅとリョウの2人で用意した昼ごはんを子供たちに配ります。
リョウは子供たちに配り終わった後は、自分の弟たちの元へ行き、面倒を見てあげています。
その光景をみたユヅは、リョウがとても弟想いのお姉さん何だなぁと感じるのでした。
綾太郎の別れの言葉
夕方、皆は帰っていきましたが、綾太郎だけ一人残っていました。珠彦に今までのお礼が言いたかったのです。
綾太郎は明日の尋常(小学校のこと)を卒業した後すぐに、東京に奉公に行くことになっています。
綾太郎の家ではずっとリョウが針仕事や内職で家計を支えていました。綾太郎が奉公に行くことで、やっとリョウにも少し楽をさせてあげることができるようになります。
今までのお礼を言った綾太郎は、帰っていきました。
そして、珠彦は、明日、東京へ行く綾太郎を見送ってやろうと考えるのでした。
いなくなった綾太郎
夜更け、リョウが急きょ珠彦の家へやってきました。綾太郎が居なくなってしまったのです。
どこを探してもいないため、リョウは泣き崩れてしまいます。
珠彦とユヅも一緒に探すことにしました。
蔵の方に提灯(ちょうちん)を取りに行くと・・・・・綾太郎は蔵の中で眠っていました。鍵をかけていなかったため、中に入って眠っていたのです。
奉公に行きたくない
綾太郎を起こすと、綾太郎は
『奉公に行きたくねーよぉー!』
そう言って泣き出します。
奉公に行ったらもう一生家に帰ってこれない。二度と姉ちゃんに会えなくなる。学校の友達からそう聞いてしまったため、綾太郎は奉公に行きたくなくなってしまったのです。
真剣に悩み苦しむ綾太郎に、珠彦は奉公とはどういうものか教えてあげます。
まじめに働いていれば暇を貰って里帰りもできる。東京に家族を読んで案内してあげることもできる。綾太郎も姉さんたちを東京に案内してやればいいと、と。
綾太郎は奉公で、家族を笑顔をにしてあげることができると知り、嬉しそうに笑います。
蔵に駆け付けたリョウは綾太郎に、奉公に行きたくないなら行かなくていい、と言います。
しかし、珠彦の話のおかげで納得できた綾太郎は
『俺ならもう大丈夫!!』
そう言ってリョウに笑顔を見せるのでした。
東京へ旅立つ綾太郎
尋常の卒業式が終わった後、綾太郎は東京へ向かうため、駅へ行きます。
リョウと弟たちも綾太郎の見送りに来ています。
そこへ、珠彦とユヅも駆けつけました。
珠彦は自分の住所を渡し、何かあったら手紙をくれといいます。
ユヅはお弁当とキャラメルを渡します。
綾太郎は姉ちゃんに別れの言葉を、珠彦に今までのお礼を言いました。
そして、汽車に乗り、東京へ旅立っていきました。
自転車で家に帰る珠彦とユヅ
珠彦が運転する自転車の後ろに乗るユヅ。
ユヅは珠彦に自転車の先生になってほしいと言います。乗れるようになれば珠彦とどこへでも行くことができるからです。
しかし、珠彦は必要ないと言います。
自転車くらい、これからもずっと乗っけてあげると言います。
そして、珠彦はユヅと一緒に生きていくために、少しずつ変わっていこうと考えるのでした。