死刑判決を受ける医者
裁判所。裁判長は被告人に判決を言い渡す。
『被告、冬間零時(ふゆまれいじ)を”死刑”に処す!!』
そういう裁判長に、死刑判決を受けたばかりの冬間は言います。
『声帯の下に腫瘍・・・』
『裁判長は喉頭がんの可能性が高い・・・』
いきなりの言葉に裁判長は戸惑います。
『すぐ手術しましょう。』
『オレが切るから。』
そう言って、冬間は鋭い目つきで笑みを浮かべます。
◆Dr.プリズナー◆
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刑務所の中へ問診
タクシーの中、一人の女医が携帯で院長と話しをしていた。
『冗談じゃないですよ、院長~・・・』
『何故私があんなところに問診に!?』
どうやら予定していた医者は急用が出来てしまい、代わりに彼女が問診を任されることになった。
問診を任される場所は『関東第六刑務所』。計犯罪者から死刑囚まで一ヶ所に集めた日本最大の収監施設です。彼女は顔を引きつらせ、刑務所を見上げます。
ネズミを手術する死刑囚
刑務所内に来た女医の月島は看守に付き添われ問診先に向かいます。何と、死刑囚を診なければいけないとのこと。
さすがに死刑囚です。月島も額に汗が流れます。
案内された牢屋の中に、死刑囚がいました。その死刑囚は鋭利なもので何か生き物を切り刻んでいます。
死刑囚が切り刻んでいたのはネズミ。
看守によると、この死刑囚は『自分は医者だ』と言い張り、牢屋の中で医者の”ごっこ遊び”をやっているのです。
実際は医者ではありません。彼の妄言です。彼は多くの人を切り刻み命を奪ったがために死刑にまでなった男でした。
死刑囚は牢屋から出され、女医の月島、看守と共に、問診のため医務室に向かいました。
看守とテロ組織のリーダー
牢屋の前に立っている看守。別の看守が来ます。交代です。
交代した看守は牢屋の中の『真壁』という男に話しかけます。どうやらこの看守は普通の看守ではなく、変装でもぐりこんだ犯罪組織の一人だったのです。
『変装はうまくいったようだな』
『ええ』
『他の同志も潜入に成功し』
『一時間後、作戦を開始します』
『脱出経路は?』
『すでに爆薬は設置済み』
『起爆すれば地下水路から抜け出せます』
『それまでどうかご信望を』
脱獄の計画が進められているのです。
診ることなく女医の状況を診察する冬間
女医の月島は憂鬱だった。目の前の眼光鋭い死刑囚を診察しなければいけないからだ。
今まで死刑囚を診察したことなどありません。死をもってしか償うことができないほどの犯罪を行った人物です。緊張しない方が無理だという思いでした。
それを冬間は見抜きます。
『声帯、脈拍ともに乱れている』
『かなりの緊張状態だ』
『胃と腸の調子を診るに睡眠時間も足りていない』
月島は驚きます。冬間は目をつぶったままの状態で自分の身体状況を言い当てているのです。
『空腹感ではない』この特徴的な腹の音は・・・月経か・・・』
『咽頭にわずかな咳音があり』
『幼いころに喘息を患ったな・・・』
『バスと88、ウエスト59、ヒップ87』
『切りやすそうな大きな心臓』
『肝臓の状態もかんばしくない・・・が』
『手術の必要はなし・・・か』
冬間は聴診器を使っているわけでもありません。何もせずにすべて言い当てているのです。
『慎重158cm、体重は・・・よん・・・』
さすがに自分の体重を言われるのはたまらないと思ったのか喋るのをやめさる星野。
爆破事件が起きる!?
『しかしこんなことをしてる場合か?』
『ここで今日、脱獄が起きる』
いきなりの発言に同行していた看守が驚きます。
『主犯格の真壁って奴の牢から聞こえたんだよ』
真壁というのは国際テロ組織のリーダーです。公共施設24か所を無差別に爆破した爆弾魔です。
冬間は脱獄計画の話をしているのを聞こえた・・・といいますが、月島と看守には聞こえていません。なにより、警備は万全です。信用できる話ではありません。
そこでまた冬間は反応します。
『今、誰かが撃たれた。』
月島と看守には何も聞こえません。冬間は『消音銃』だといいます。なら、なおさら聞こえるはずはありません。
人が近づいてい来るといいます。3・・・2・・・1・・・扉からは冬間が言い立てた通り、銃で撃たれた看守が入ってきました。
冬間は月島に『ドアを閉めろ!』と言います。すごい迫力であったため急いでドアを閉めカギをかけます。
すると、外から激しくドアを叩く音が!
月島も、看守も一体なにがおこっているのかわかりません。
月島の過去の医療ミス
看守は女医である月島に言います。
『彼を・・・彼を助けてやってください!』
先ほど入ってきた男は左横腹を撃たれたようでかなりの出血です。苦しそうにもがいています。
月島はどうすればいいのかわかりません。治療するにも、何も道具も環境もそろっていません。
何より・・・月島は過去、手術で大きなミスを犯したことがあります。
『何やってるんだ月島ぁ!!』
『まずいぞ! 血圧がどんどん下がってる!』
『急いで除細動器の用意だ!!』
『もうダメだ助からん!!』
『手術は失敗だ!!』
月島は動揺します。何をすればいいのかわかりません。焦るばかりで何が何だかわかりません。
そこで、冬間が撃たれた看守の状態を診ます。
『腹の肉が銃でエグられて動脈が切れてる』
『この場で縫わなきゃ出血死・・・』
『それほどの重傷だ』
冬間は女医の月島が持ってきた道具を確認します。
『ふむ・・・縫合針はあるが”糸”がない・・・』
『手術するには絶望的な設備だな・・・』
そういいながら、冬間には笑みが浮かびます・・・・・。
そして、月島の方に近づき・・・・・
テロリスト達の脱獄計画
外から医務室の扉を蹴っているのは脱獄しているテロリスト集団たちです。
実は、テロリストたちは医務室から地下水路に降りて脱出するという計画でした。医務室にこもられてしまうと脱獄することができません。
それを聞いた脱獄犯にしてテロリストのリーダーは・・・・・
もともと医務室には地下水路を開けるための爆薬を仕込んでいました。それを爆発させ、一網打尽にしてしまおうというわけです。
撃たれた看守を助けた冬間
医務室の中では冬間により、看守の動脈縫合の手術が行われ、成功していた。
冬間は月島の髪の毛を縫合糸にしてしまい、看守の動脈を縫い合わせてしまったのだ。しかも手錠をされたままの状態で。驚くべき能力です。
爆発に巻き込まれるテロリストたち
耳の良い冬間は、医務室の床に爆弾が仕掛けられていることに気づきます。
医務室の中には爆弾があり、いつ爆発するかわからない状況。とはいっても、外には脱獄犯が待ち構えています。冬間たちは八方ふさがりでどうすることもできない状況になってしまいました・・・・・。
医務室の扉の使途にテロリストのリーダーがやってきました。リーダーは医務室の中にいる者すべてを殺してしまう気満々です。むしろ楽しんでいます。
『我々の自由をジャマする者は』
『全て爆破しつくす!!』
そういって爆破スイッチを押しました。
しかし・・・テロリストにとっては予想外のことが起こります。爆弾は床に仕掛けていたはずですが、近い位置(扉のすぐ前)で爆発します。予想外の位置での爆発でした。
テロリストたちは爆風に巻き込まれ、全滅してしまいました。
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地下水路に落ちた冬間と月島
爆発によって意識を失っていた月島。目を覚ますと周り中、ガレキの中に倒れていました。
冬間は説明します。爆発の瞬間、冬間は爆弾をドアの前に投げ、全員、医務室の奥の部屋に隠れていました。そのおかげで被害が最小限になっていたのです。
看守たちは医務室の方で救助されました。そして、冬間と月島は地下水路に落っこちてしまったのです。
もともと、テロリストたちは医務室を爆弾で爆破し、地下水路から逃げる計画でした。爆発によって二人はそこへ落っこちてしまっているのです。何とか、周りにあるガレキを排除し地下水路から抜け出さなければなりません。
外傷性の心タンポナーデ
突然、月島は苦しみだします。地下水路に落ちた時に胸を打ったのが原因のようです。
冬間は心音が小さいのと、血圧の低下により状況を理解します。
『これは恐らく”外傷性の心タンポナーデ”だ』
急いで手術をしなければ命にかかわります。
しかし・・・月島はまだ冬間を信用していません。もともと死刑囚です。信用しろというほうに無理があります。
そんな彼女に冬間は取引を要求します。
冬間は自分の手にかかっている手錠を外したい。実は先ほど、看守からこっそりと手錠のカギを盗んでいます。しかし、手錠のカギ穴は前後にあり、誰かの協力がなければ開けることができない仕組みになっています。
冬間は
『アンタが一緒に外してくれれば』
『俺が助けてやる』
月島は戸惑い・・・拒みますが、冬間は必ず助けると自信満々の笑みを浮かべるのです。
月島は困惑しますが・・・そこへつぎはぎだらけのネズミが現れます。
月島は、はじめ、冬間の元へ来た時にネズミを切り刻んでいたことを思い出します。そのネズミです。
冬間はネズミを切り刻んでいたわけではありません。ちゃんと手術し、ネズミの命を助けていたんです。そのことを月島は理解します。
月島の状況はどんどん悪くなり、苦しさも増してきます。月島は、冬間の手錠を外し、手術を行ってもらうことにしました。
外傷性の心タンポナーデの手術
手錠が外れ、自由になった冬間。
月島に対しての手術が始まります。
心タンポナーデを治すには、ミゾオチから針を入れ、他の臓器を避け、心臓のみを刺さなければいけません。しかも、心臓へ刺しすぎてしまうと、死んでしまいます。
心臓の一部に穴をあけるという難解な手術に冬間は挑むのです。
冬間の過去
冬間は月島に刺す針を見つめながら、昔のことを思い出します。
『また救っちまうとはな・・・』
『零時、お前の耳の力には驚かされるよ』
『その耳は命あるもののk同を全て聞き入れ』
『脳に体内のイメージを視覚化することもできる』
『それは命を救うための力・・・』
『だが、使い方によっては白くも黒くもなる』
『いいか・・・? 忘れんな・・・』
『決して間違えるんじゃねえぞ・・・・・』
冬間はその時のことを思い出し、眉間にしわを寄せます。
そして・・・・・、目をつぶり、手術を開始します。
月島のミゾオチに針を突き刺す冬間。音を聞いています。体内の音に全神経を集中・・・心臓部の形を強烈にイメージ・・・!!
見えた!! 冬間は音だけで心臓の位置を的確に理解。そして、針を徐々に徐々に心臓の方へ突き刺していきます。浅くてもダメ、深すぎてもダメです。それを音だけで見分けなければいけません。
そして・・・冬間は血がたまっている位置に針を刺すことに成功! いったん針を止め・・・針を抜きます。
そうすると、心臓を圧迫していた血が外部に噴き出します。心臓を圧迫していた血が外部に出ることで、楽に心臓を動かすことができるようになりました。手術は成功です!!
死刑囚:冬間逃亡
手術を追えた冬間は、その場を後にしました。地下水路を利用して外に逃げたのです。
脱獄です。
看守たちも必死に探しますが見つかりません。
事実上、手錠を外すことで冬間の脱獄に協力してしまった月島。しかし、彼女は冬間が医者として人の命を救ったことも知っています。
処刑されなければならないほどの大罪人なのか・・・、本物の医者なのか・・・
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「問診」ではなくて「往診」では。
日本国では、死刑囚は「刑務所」ではなくて「拘置所」に入ります。刑の執行=死なので。
「咳音」とい医学用語を聞いたことがありません。「軽度の喘鳴」では
「咽頭」で異常音が聴取できたら、たぶん窒息寸前です。
腸の蠕動音で月経がわかるのはすごいですが、下品な人ですね。
心タンポナーデは、心嚢腔に針を刺しただけでは、心嚢内の液体(血液)が胸壁の軟部組織に妨げられて排出できないので、排液には至りません。チューブ(カテーテル)を挿入してドレナージ(導出)させなければ。アイスピックをストローに刺して、ピック先端が心嚢腔に達した時点で、ピックをストローから抜けば、理論的にはドレナージは可能だと思います。私には無理ですが。
ボクも医療関係に詳しいわけではない為、正直なところわかりません(;´・ω・)
原作者の方はあまり専門的な知識がないのかもしれませんね。
間違っているところがあるとするなら
単行本の方で修正や説明書きがはいるかもしれません。
こういう専門的な知識を必要とする漫画は結局中途半端に独学で学んでそれでも描きたいと思ったものを描いているんだから専門としてる人達からは批判的な意見が多いかもしれない
だけどそんなことを恐れていたら漫画なんて描けないしみんな同じような題材の作品しか描けなくなる
自分たちで限界を作って何もしないよりかは内容がいい加減でも「漫画」なんだからいいんじゃないの
リアリティに描くだけが漫画じゃない
「リアルに描くだけが漫画じゃない」というご意見には大賛成です!
でも野球漫画で、主人公だけがバッターボックスから3塁に走っていいとか、将棋漫画で、主人公だけが、2回続けて駒を動かしてもいいとかだったら勝負漫画として面白いのかどうか。たとえば、日本国において死刑囚は刑の執行まで拘置所で過ごしていることは、決して特別な知識ではないと思います。犯罪者を描く漫画で最初の状況設定からコケて面白いのか?いきなり「問診」と「往診」の区別がつかない医者が出てくる漫画ってなんなのよ。医学論文ではないので、「中途半端な独学」で漫画を描いて、いけないことは全くありません。真に面白い漫画は、リアルさを装いながらも、大きな「嘘」をついています(「ブラックジャック」とかあきれるくらい「大嘘」のオンパレードです、でも死亡診断書1000枚書いた医者でも読んだら泣きます)。それが創作というものではないでしょうか。想像の翼で限界を突破して、おおいに読者を楽しませていただきたい。でもこの漫画は、やっぱり打ったら3塁にいきなり走っちゃうレベルなんで、中途半端などという程度の描写ではありません、それ以下です。同人誌ならそれで結構、でも天下の少年マガジンの巻頭漫画なので、しかも原作付き漫画ですから、も少し勉強はされたほうがよいのでは。いかに漫画といえども最低限の事実を踏まえた方が、より面白いと思います。