◆前回のあらすじ◆
クリスマスプレゼントでサイモンから腕時計を貰ったチセは、サイモンにお礼を言いに行くことにしました。昨日、チセが勝手にロンドンに行ったことを気に掛けるエリアスは一緒についていくことにします。
途中、自分の弟を探す少女ステラと出会います。父も母も弟(イーサン)のことを覚えていないという奇妙な状況に戸惑っています。ステラのために弟探しに協力するチセとエリアス。隣人たちの協力の元、探し出した先にいたのは、あの『灰ノ目』でした。
◆魔法使いの嫁◆
第6巻は9月10日発売予定
弟のイーサンを捨てたのはステラ
父親も母親も忘れてしまった弟のイーサンをやっと見つけ出したチセ、エリアス、そして姉のステラ。
弟をさらったのは『灰ノ目』でした。
しかし、灰ノ目は言います。『これ(弟イーサン)を捨てたのは、お前(姉ステラ)だろう?』と。
『我々はヒトの言葉をよく聞く。』
『ヒトにヒトの言葉は届きにくいようだがな。』
そういう灰ノ目の言葉の意味をチセは理解できません。
ステラは弟イーサンと喧嘩した時のことを思い出します。
ステラとイーサンの喧嘩
クリスマス休暇でおばあちゃんの家にきていたステラの家族。
イーサンは雪を見るのが初めてではしゃいで喜んでいました。
それを、ステラは心配して注意します。
『ちょっと! はしゃいで転ばないでしょ!』
『ほら、ちゃんとあったかくして』
『雪って冷たいんだから!』
『風邪ひくわよ!』
そういって、ステラは初めての雪を楽しんでいるイーサンの首根っこを捕まえて注意します。
そんな対応のステラにイーサンもイラつきます。
『・・・うるさいなぁ。』
『わかってるってば!』
それでもお構いなしに言葉をつづけるステラ。
『あんたが体調悪くしたらママやパパが困るのよ。』
『あんた、まだ留守番できないじゃない。』
『できるよ!』
『できるできないじゃなくて、しちゃいけないの!』
『ただでさえあんたは周り見ないのに・・・』
イーサンが風邪をひかないよう、首にマフラーをかけてあげるステラですが、あまりしつこいため、イーサンもマフラーをはねのけて言います。
『あーもう、うるさいな! じゃま!』
『おれがカゼひいても姉ちゃんは困らないだろ!』
『ほっといてよ!』
その対応に、ステラもカチンときます。
『・・・心配しているのにその言い方なに!?』
『それだよ! いつだっておれに構ってさ!』
『ほっとけばいいのに勝手にいらついて怒るのやめてよ!』
『あれはだめ、それはだめ』
『ママよりうるさくてそんなにママに気に入られたいの?』
『いつもカッカして・・・』
『もっと静かでやさしい姉ちゃんが欲しかったよ。』
その発言にステラは怒りをあらわにします。
『・・・あたしだって!』
『あんたみたいなわがままな弟いらないわよ!!』
『え、ちょ・・・』
『いーわよ! あんたなんてもう知らない!』
『どこでも遊びに行ってカゼでも何でも引いちゃえ!』
そう言って、ステラはイーサンの元を離れていきました。
言葉は呪いにもなる
あの時、口にしてしまった『いらない』とうい言葉。ステラにとっては本気で言ったわけではありません。いつもの喧嘩の言葉でしかありませんでした。
しかし、灰ノ目はそのようには判断しません。
『言葉や文字は魂のこもる音と形』
『誰かに届いてしまえばもう取り消しはできぬよ』
『戯れにはいた言葉でさえ』
『その気軽さゆえに呪いのもなるのだ』
『はいた言葉が”どんなもの”に気に入られるかわからんぞ?』
『ーーー死んでしまえ』
『なあどと言わないで良かったなぁ?』
自分が発してしまった言葉と共に、灰ノ目の言葉がステラの心を激しく揺さぶります。
弟の名前を思い出せない
『・・・のう元姉上さまよ』
『お前は今、弟御の名を思い出せるか?』
そう言われて、ステラはハッとします。弟の名前を思い出せません。
戸惑っているステラに、チセは『ステラ・・・?』『イーサンくんだよね?』そう教えてあげますが、なぜか名前の部分だけもやがかり、ステラには弟の名前が届きません。
弟の名前がわからない、弟の名前を言ってもらっているのに聞こえない。ステラは混乱します。
『それが縁が切れるということだ』
『縁の切れたものはだんだんと存在を忘れ去られる』
『名前も歳も生まれも顔も声も』
『いたかどうかさえ忘れてゆく』
灰ノ目はイーサンを弟子にしようとする
今まで黙って聞いていたエリアスは、灰ノ目にイーサンをどうする気かと尋ねます。
『そうだなぁ』
『ぬしにならって我も弟子をとってもいいかもしれんなあ』
『まあ手足の1,2本はとれるかもしれぬし増えるかもしれんが』
それを聞いて、ステラは『やめて!』と灰ノ目から弟を取り返そうと向かっていきます。しかし、灰ノ目には実態がないかのように透き通り、ステラは灰ノ目に届きません。
『遊び』を仕掛けてくる灰ノ目
イーサンはステラが捨てたものであり、自分が拾ったものであると、返す気がない灰ノ目。何か対価があればと考えますが、ステラは何も持ち合わせていません。
そこで、灰ノ目は遊びを提案します。
灰ノ目はエリアスを指さし『お前も付き合え、影の子』そういうと、エリアスの地面が無くなり、エリアスは地中に落下していきました。
そして、チセが落ちてしまったエリアスを追いかけようとしますが、地面は雪に戻ってしまいます。
灰ノ目はエリアスだけでなく、手に持っていた弟のイーサンを雪の上に落とすと、エリアス同様、雪の地面の中に消えていきました。
『遊び』のルール説明
エリアスとイーサンが消えてしまい戸惑うチセとステラ。
灰ノ目は説明します。
『お前たち2人で探してみるがいい』
『ーーーなに、そう遠くはない多少は骨が折れるかもしれんが』
『時刻は日没までとしよう』
『それまでにあやつらを見つけられればお前たちの勝ち』
『負ければ我のものだ』
それにチセが反発します。
『・・・私たちが不利です。』
『貴方は何も牛わない。勝手すぎる。』
そういうチセの言葉には反応せず、灰ノ目は言います。
『さあ行け』
『己という獣の鼻で』
『死に物狂いで探すといい』
『冬の日は短いぞ?』
そういうと、灰ノ目はその場から姿を消しました。
エリアスとイーサンを見つける方法は?
弟の名前を忘れ、姿まで見えなくなり、ステラはもうどうすればいいのかわかりません。
チセもどうすればいいのかわかりません。
そんなチセをルツが励まします。
『見つけちゃいいんだよ見つけちゃ』
『見つからなくてもその時はまた探しに行きゃいい』
『東の端のお前と西の端のあいつが逢えたぐらいだ』
『こんなせまい丘の中で逢えないわけないだろう』
ルツの励ましに元気をもらったチセは、エリアスとイーサンを探すための方法を考えます。
『ーーー己という獣の鼻で』
灰ノ目が言っていたこの言葉はヒントではないかなとチセは考えます。
『獣の鼻』ということで、ルツににおいで分からないか聞きますが、ルツにもハッキリとしたことはわからないようでした。
とっさに『獣』という言葉で思い出します。以前、灰ノ目から渡された獣の皮です。あれがあれば何とかなると悟ったチセは急いで家へ取りに戻ります。
池の水中に捕らわれたエリアスとイーサン
今までずっと意識を失っていたイーサンは目を覚ましました。そこは池の水中の中です。魔法によるものなのか、水中でもかわりなく息をすることができました。
そのことに気づく様子もなく、イーサンは目の前にいる骨のエリアスに驚きます。
最初はエリアスのことを怖がりましたが、だんだん興味を持ちます。カッコいい被り物にも見えるからです。
エリアスはイーサンがなれなれしく近寄ってくるため、姿をチセと同じものに変えました。
家族というものは?
エリアスはイーサンに姉さん(ステラ)のことを聞きます。口うるさい姉さんなんていいらないって言ったんだろ? 家族って大事なものなんじゃないのか? と。
イーサンはうるさかったからで別に本気じゃなかったと答えます。8歳なのに子供みたいに言われて恥ずかしいと。
人間の心があまりよくわかっていないエリアスはピンときません。『要するに、家族とは長く一緒に暮らして助け合うグループの単位だろ?』とステラに聞いてみます。
イーサンはそうは思っていないようです。8歳のイーサンもよくわかりませんが、自分の生きてきた中での説明をします。
『んーーーたぶんさ』
『おれは姉ちゃんにあんなこと言ってさ』
『いまはすごくゴメンって言いたいし』
『パパとママともまた会いたいし』
『ハグもしたい、一緒にゲームもしたい』
『クリスマスパーティーだってやってない!』
『・・・ほかの誰かとなんて嫌だよ。』
『ーーー家族ってそう思えるひとたちのことじゃないのかなあ』
考えもしたことないような答えを聞き、エリアスは衝撃を受けるのでした。
エリアスを見つけるチセ
水中の中にいるエリアスは、地上の方でする地響きに気づきます。地上を覗いてみると、大きなクマがいました。
エリアスはそのクマがチセなのだとすぐに気が付きます。
クマの形をしたチセは一直線にエリアスがいる池の方へ向かってきます。
以前キツネの姿になった時は意識がもうろうとしてエリアスの元から飛び出していったチセでしたが、今回はクマの姿でエリアスを見つけると、目的を達成したチセはすぐに元の人間の姿にもどることができました。
水中の中にいるエリアスを見つけたチセ。そのおかげか、エリアスは水中から出てくることが出来ました。
そして、そのまま『お疲れさま』といい、チセを抱きしめました。まるで人間のような対応です。先ほどのイーサンの話を参考にしたのかもしれません。
水中の中へ入っていくステラ
イーサンは水中から出てきません。そっぽ向いてうずくまっています。
それを、ステラは水中に入って弟を迎えに行きました。
弟は姉ちゃんが怒っているからいじけているようです。そんな弟にステラは言います。
『あたしがお姉ちゃんじゃいや?』
『・・・もう名前も思い出せないけどさ』
『あたしはあんたが弟ならいい』
『・・・そもそも弟なんてあんたしか知らないもん』
そういうステラに弟は
『・・・おれも』
『あんたが姉ちゃんで・・・いいよ』
そう言って和解した二人は、池の水中の中から出てきました。
灰ノ目の忠告
これらをずっと陰から見ていた灰ノ目は楽しそうに笑います。
『フフフ、楽しい負けだ』
『偶然であれ必然であれ』
『人の本気を見るのは楽しいものだ』
『我は楽しめた』
『お前たちは契約を果たし弟御は姉の元へ戻る』
『悪くはない聖誕祭であろ?』
そう言って、灰ノ目はスタらの元へ行き、忠告します。
『人の言葉は強い(こわい)』
『ーーーゆえに我らは人の傍らでそれを聞く』
『心せよ』
『我らだけではない』
『もっと上のもの』
『・・・地に潜み陰に潜むものも』
『人を”みている”』
『心せよ、持たぬ子よ』
そして、灰ノ目はステラがポケットに入れていた『魔力の結晶の花』を取り出します。そして、この魔力の結晶の花を貰う代わりに、家族の記憶を返してくれました。
沈んだ顔のチセ
灰ノ目が去り、霧が晴れると、森の中にいたはずですが、チセ達は町の中にいました。エリアスは慌てて隠れます。
そこへ、ステラとイーサンの名を呼ぶ声が。二人の両親です。なんだか安心してちょっと涙ぐんでしまうステラ。
そして、ステラは笑顔で両親にチセを紹介します。そして、チセに助けてくれたお礼を言います。クッキーをもっていくという約束も守るから家を教えて!と。
それを見ていた弟のイーサンは
『ステラはすんごく押しが強いからさ』
『ヤなことはイヤって言いなよ』
とアドバイスします。
その言葉に、チセはハッとし、少し沈んだ顔をするのでした。