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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
ユヅが熱を出して倒れる
急にユヅが倒れてしまいました。ヒドい熱です。
いつも元気だったユヅ。そんなユヅが倒れてしまい、珠彦はどうしたらいいのかわかりません。
珠子がユヅをかかえて部屋まで運ぼうとします。珠彦は、右手が使えないため、運ぶことができません。
何もできない珠彦
珠子は村に行って医者を呼んでくることにします。珠彦にそれを頼まないのは、珠彦が知らない人と上手く話すことができないことを知っているからです。
珠子は珠彦にユヅの額を冷やす役をお願いします。
しかし、それもまた、珠彦にとっては難しいことでした。片手だけで井戸から水を引き上げ、桶で運ぶというのは簡単な事ではないのです。
珠彦は何度も挑戦しますが、なかなか上手くいきません。
珠子は村から医者を連れてきます。
その時になっても、珠彦はまだ上手くやれていませんでした。
珠子
『もういいです。私がやります。』
『兄様は何もしなくて結構です。』
過労からくる風邪
ユヅを診て、部屋からでてくるお医者さん。
外で待っていた珠彦は、医者に駆け寄り、お礼とお金を渡します。
医者は珠彦に、ユヅの状況を説明します。『過労からくる風邪』とのこと。
志磨家はとても評判が悪いため、医者はユヅがヒドくこき使われているのだろうと勘違いし、珠彦をばとうします。
とはいえ、ユヅに無理をさせていたことは事実です。珠彦は反論することができませんでした。
珠彦の側にいる
横になったおかげか、ユヅは少し元気を取り戻していました。
珠子はこんな時に役に立てない珠彦のことを少し不満に感じています。別の人と結婚した方がいいのではとユヅに語り掛けます。
そんな珠子に、ユヅは昔あった出来事を話します。
小さいころ、お母さんにイジワルされている子がいました。その子はいつも『早く死にたい』『こんなに不幸なら消えてしまいたい』と言っていました。何だか珠彦に似ています。
そのことをお母さんに相談したらこう言いました。
『その子が色々な経験をしてたくさん物を考えて、そのうえで』
『自分から幸せの方向へ向いてくれる時がくるって』
『そう信じて見守ってあげなさい』
だから、ユヅは珠彦が自分で幸せになることを考えられるその日が来ると信じて、ずっと側にいるつもりなのです。
深夜、苦しむユヅ
深夜1時。
珠子がユヅの部屋を出入りしている気配がありません。ユヅのことを気に掛ける珠彦。
珠彦は水を持って行ってあげようと、ユヅの部屋を覗いてみます。すると・・・・・
胸元に血がついていました。
珠彦
(吐血!?)
『ユヅ!!』
珠彦は焦ります。
良く見てみると、手の方から血が出ていました。どうやら胸が苦しくて、必死になって胸のサラシをこすっていたようです。
ユヅ
『珠子さ・・・お願い・・・コレ・・・・・』
『取って・・・さらしが・・・苦しいの・・・・・』
なぜか珠子はどこにもいない。(お風呂でした) 自分がやるしかありません。
右手が使えないため、ハサミでサラシを切る珠彦。すると・・・・・
珠彦は驚きます。
ペッタンコだと思っていたのですが、思いのほか、ユヅには胸があったのです。どうやら、普段はサラシで圧し潰していたようです。
呼吸が楽になり、意識がハッキリとしてきたユヅ。
珠彦が目の前にいることに気が付き、モソモソと胸を隠し、謝ります。
ユヅ
『ごめんなさい、こんなみっともない乳で!!』
『この乳がっ体中の養分を吸収してるかのごとく』
『大きくだらしなくなってえええ』
珠彦は、なんだかユヅを傷つけてしまったような気がして申し訳ない気持ちになります。
珠彦
『すまない!!』
『僕はホント君にとって最低な男だな・・・』
『病気にさせといて看病もまともにできない』
『やっとそれらしいことをしたかと思えば君に恥をかかせて』
『全部裏目に出てしまう』
『君に取り返しのつかない事をしてしまう前に』
『この関係を解消した方がいいのかもしれない・・・・』
ユヅ
『私は何があっても珠彦さまのお側におりますから・・・』
『私の事なら大丈夫、私はそんなにヤワな女子ではありません』
ユヅを幸せにできる男になりたい
次の日の朝、ユヅはもう元気になっていました。
朝食は、ユヅが初めて用意してくれた手料理である『ひっつみ』でした。珠彦の大好物です。
ユヅ
『さっ早く早く、珠彦さま』
そう笑顔でほほ笑みかけるユヅをみて、珠彦は心臓をぎゅっとつかまれたような、わくわくするかのような、そんな心境でした。
(ユヅを幸せにしたい)
(それができる男になりたい)
珠彦は心からそう思うのでした。
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