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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
怒り出すことりちゃん
今、珠彦の家の畳の上に寝転がり、火鉢に当たりながら歌の文句を考えていることりちゃん。
珠彦としてはいまだに信じられないといった心境です。
そこへ、ハカルがやってきます。
ハカル
『もう3日目や、そろそろ帰ってきいや』
ことり
『珠彦くんはおってもいいって言いはったもん』
それよりもと、ことりちゃんはハカルに自分で書いた歌の文句を見せて感想を聞きます。
しかし、ハカルは読むことなく感想を述べます。
ハカル
『・・・ことりちゃんの書く文句は』
『素晴らしいと思うで』
それを聞いて、ことりちゃんはまた怒り出してしまうのでした。
ことり
『ハカルくんのドアホ!!』
ことり
『先に音楽に恋してたんはハカルくんなんや』
元々、ギターをつかい演奏して歌っていたのはハカルの方でした。ことりちゃんはそんなハカルと一緒に歌うのが好きだったのです。
ハカルはこの後、3年も病気に苦しめられました。
ことりちゃんは病気が治ったんだからギターをまた始めてほしいと思っているのですが、ハカルはそれをずっと拒んできたのです。
ハカル
『もう、病気が治っただけでもいいやんか』
『3年も頑張って病気と闘ったんやで、もうクタクタや』
『ことりちゃんに追いつくまでまた頑張らなアカンなんて』
『しんどいわ』
それがハカルの本音でした。
初めての友達の助言
縁側で落ち込むことりちゃん。それを慰めるユヅ。
ハカルもまた、最低な自分に落ち込むのでした。
珠彦
『いや、気持ちわかるよ』
『僕も事故で右手がこうなってから』
『明るい未来なんて想像したこともない』
『起きるたびに動かない右手を見てふさぎ込み』
『早く死にたくてたまらなかった』
『でもユヅがきて一緒にいるうちに』
『がらにもなく頑張ってみたくなった』
『そうして踏み出した最初の一歩は』
『とても素晴らしくて、かけがえのないものばかりだった』
珠彦は、今までに出会った皆との楽しい時間を思い浮かべながらそう言います。
いきなり、そのように言われてしまってドギマギするハカル。
珠彦
『僕がユヅに嘘をついたとき』
『君は嘘を本当のことにしたらいいと言ってくれただろう』
『あの時、とても嬉しかったんだ』
『友達たちといってくれたことも・・・・・』
何だか照れくさいからと言って席を立とうとするハカル。
珠彦
『つまり、何が言いたいかというと』
『僕にも妹がいるのだけど、妹は可愛い』
ハカルに恥ずかしいから手短にと言われ、手短に言ってしまう珠彦。
ハカル
『うっとこのことりちゃんかて可愛いわ』
『僕の事、ずーっとずっと待っててくれてんねんぞ』
そう言って、ずっと待たせてしまっているんだなと、改めて考えてしまうハカル。ことりちゃんの気持ちはずっとわかっていたのに、ずっと逃げてしまっていたのです。
ハカル
『・・・・・ことりちゃんとこ行ってくる!!』
『初めての友達の助言やさかい』
『ちょっと一歩踏み出してみるわ』
また、ことりちゃんと一緒に
縁側で落ち込むことりちゃん。
そんなことりちゃんの元へ、ハカルはギターを持ってきて言います。
ハカル
『ことり、今から歌うさかい』
『下手やけど笑わんといてな』
ことり
『え、え・・・』
隣に座り、ギターを演奏し始めるハカルをみて、ことりちゃんは眼を大きくして驚きます。
ハカルが歌うのは、ことりちゃんの『月夜ノコトリ』でした。
空を飛べずに鳴く鳴く、ことり
いつも独りで鳴いているよ
夕月見下ろす木の陰で
ひとり寂しや涙こぼせば
ひとりじゃないよと春風が
ドレミファそうっと優しく吹いて
病気をして以来、数年ぶりに演奏したハカル。久しぶりで指が震えてしまいます。
ことり
『久しぶりに弾いて、どうやった?』
静かに、そう聞いてくることりちゃん。
ハカル
『・・・・・ものすごく楽しかった』
ことり
『うちの曲のギターのコード』
『憶えてくれはったんやねぇ』
『やっぱりギター好きなんやね』
ハカル
『・・・そうやね、好きやなかったらできへんね』
『少しずつまたひいてみようかなあ』
『ことりちゃんとまた一緒に歌いたい』
ハカルそう言って、ことりちゃんに微笑みかけます。
そんなハカルを見て、ことりちゃんはとても喜びます。
ことり
『やっとハカル君のホンマの笑顔がみれたあーっ!』
病気の前のハカルが戻ってきたようで、ことりちゃんにとってはとても嬉しかったのです。
その言葉を聞いて、ハカルは思います。
ハカル
『そっか・・・ホンマに笑えてへんのは』
『僕の方やったんねぇ』
そして、また二人で音楽を演奏し、歌い始めるのでした。
◆感想◆
今回のストーリーは2話編成でしたが、どちらも『ことりちゃん』と『ハカルくん』の話でした。過去を乗り越えて、今後は二人で音楽を楽しんでいくってことなんでしょうね。
もしかしたら、これからは『ことり&ハカル』でやっていくのかもしれません。
そういえば、前回11月になったばかりで、今回一気に12月となってしまいました。作者さん的には、その後の珠彦の学校生活編はあまり書かないってことなのかもしれません。まぁ、ユヅの登場機会が減ってしまいますからね。ポイントポイントで表現していくってことなのだと思います。
そして、気になるのは『兄の訃報』です。長男『珠樹』が亡くなってしまったようです。
ふと思ったのですが、もしかして、父親は『長男と珠彦のすり替え』を考えているのではないでしょうか。
・長男が亡くなったことは誰にも伝えない
・葬式もしない
・珠彦をそのまま長男として扱う
・名前も長男の『珠樹』を名乗らせる
もともと、次男である珠彦は死んだものとして扱われています。ですから、長男の代役として扱えると父親が考えている可能性はあると思うんですよ。
そうなりますと、珠彦は家督をつぐわけですから、どこぞの娘(ユヅ)と結婚などということはありえないということになってきます。志磨家と対等の大きな家の娘さんと政略結婚という話になってきますよね。つまり、ユヅと別れなさいという話になってくるというわけです。
ありえそうで怖い・・・・・。
もしかしたら、しばらくはホンワカ作品でなくなってしまうかもしれません。
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