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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
珠樹の葬儀
関東大震災で負傷し重症となっていた兄の珠樹が亡くなりました。
珠彦と珠子も葬儀にやってきます。
姉の珠代は涙を流し、珠樹の死を悲しみます。
そして、弟の珠央。珠彦とは久しぶりの再会です。
珠央は以前、珠彦が事故で怪我をした時のことを頭を下げて謝ります。
珠央
『いつぞやは怪我をした兄さんに』
『酷いこと言ってごめんなさい』
『子供だったとはいえ』
『言ってはいけない事を言ってしまいました』
あの時、自動車事故で珠彦は右腕が二度と動かなくなり、そして、母親は亡くなってしまいました。その時、珠央は珠彦を酷くののしってしまったのです。
そして、父親も珠彦の元へやってきます。
何だかいつもより小さく見える父。
父
『子供が先に逝ってしまうのがこんなに辛いとはな』
『あの震災でウチも被害を受けたが』
『一番大きな被害は珠樹だ・・・・・』
父は珠彦の学校での生活を心配します。上手くやれているという事を聞き、安堵。
父
『そうか・・・よかったな、珠彦』
『お前は死人ではない』
『ひどい事を言ってすまなかったな』
そう言って、珠彦に温かい言葉を投げかけてくれるのでした。
東京でコンサートの小鳥ちゃん
葬儀からの帰り、珠彦は多くの人が集まっているところに遭遇します。
小鳥ちゃんが東京でコンサートをやっていたのです。
珠彦の存在に気が付いた小鳥ちゃんは、手をあげて珠彦に微笑みかけます。
コンサートが終わった後、小鳥ちゃんは変装して珠彦と共に帰路へ。
珠彦は兄の葬儀の事は話さず、ユヅの誕生日プレゼントの事を話します。
珠彦
『ユヅがもうすぐ誕生日なんだ』
『何か良い贈り物はないかと』
ユヅは年頃の娘ですが、遠慮しているのか何かを欲しいと言ってきたりしません。
小鳥
『うん・・・ホンマは欲しいと思う』
以前、反物を買ってあげた時はとても喜んでいました。その時の笑顔が可愛くて忘れられません。珠彦はユヅの喜ぶ顔がみたくてたまりません。
そんな時、フッと珠彦の目に飛び込んできたものが・・・・・。
ユヅと二人きりの年末
いよいよ今日は12月31日。大晦日でもあり、ユヅの誕生日です。
ユヅは台所で年越しと、新年のおせちの準備。
冬休み、珠子が戻ってくる約束でしたが、叔父さん夫婦が患者にタチの悪い風邪をうつされてしまい寝込んでしまっています。心配だからという事で、珠子は戻らず、神戸で看病することにしました。
リョウたちは、綾太郎の奉公先に招待され浅草へ行っています。
白鳥兄妹も京都の祖父母の家へ行っています。
今年も二人きりの年末となります。
ユヅへの誕生日プレゼント
年越しの準備もひと段落。珠彦とユヅは居間でくつろぎます。
珠彦
『ユヅ、16歳の誕生日おめでとう』
『君ももう16か・・・すっかり大人っぽく・・・』
ユヅ
『えっ(ドキッ)』
珠彦
『・・・変わらないか』
ユヅ
『伸びましたよ、一寸ほど!』
『珠彦様も伸びてますけど・・・』
ユヅがここに来てもう3年。色々なことがありました。そんな思いを胸に、珠彦はユヅに誕生日プレゼントを贈ります。
そして、プレゼントはもう一つ。ユヅあての手紙を用意しました。ユヅが以前、珠彦の誕生日の時に手紙を用意してくれたので、そのお返しです。
(いつも僕の幸せを願ってくれるユヅ)
(僕も君の幸せを強く願いたく・・・)
(「きっと幸福になる」の花言葉を持つ)
(スズランを贈ります)
(このようなコンパクトなら)
(懐中へお守り代わりに忍ばせておけるのが)
(よろしいかと思い至りました)
(これに込めし想いは二つ)
(一つ、僕に沢山の幸せをありがとう)
(二つ、僕の妻として幸せにさせてください)
(僕はユヅが大好きです)
手紙の内容を聞いたユヅは思わず・・・・・
珠彦を押し倒して、何度も接吻してくるユヅ。
そんなユヅを反対に押し倒してしまっう珠彦は、顔を赤らめつつユヅに手を出そうとしてしまいますが・・・・・、
家の中に勝手に入ってくる猫が、エサを求めて妨害してきます。
それがおかしく、なんだか急に笑い出してしまう二人。
珠彦
『フ・・・フフフフ・・・・・』
ユヅ
『フフフ・・・あはははは』
珠彦
『そうだった・・・・・』
『この先は結婚してからだったな』
ユヅ
『はい』
『私・・・年越しソバでもこしらえてきます!』
珠彦
『ありがとう』
除夜の鐘が鳴り始めます。もう今年も終わりです。
次の日、1月1日、元旦。
ユヅと一笑に初詣にでもいこうかと思い、珠彦は家の中のユヅを探すのですが・・・・・
◆感想◆
兄の死を涙を流して悲しむ珠代。幼かった頃の過ちを素直に謝罪し、兄を立てる珠央。そして、『いつもより小さく見える』と思わせるほど珠樹の死を悲しみ、珠彦を死人として扱った事を謝罪する父。
これが志磨家のやり方ですか、見事です! 権力や金に物を言わせた力ずくなイメージがあったのですが、どうやら『人心掌握術』を駆使するタイプのようです。
おそらく、一定の年齢に達してから、志磨家独特の企業戦略としての教育を施されるのだと思われます。珠彦の場合はそこまでいく年齢になる前に家を追い出されたんでしょうね。
とは言っても、このフラグがちょっと気になります。おそらく作者さんは父親を完全な悪としての存在として考えていないと思います。何らかの目的といいますか、何らかの理由を用意しているようにも思えるんですよね。
おそらく、母親の事が何か絡んでいるのだと思います。この作品、不思議と珠彦の母親の事があまり語られていないんですよね。終盤に向けて何か重要な要素となってくるような気がします。
ユヅがいなくなってしまった理由は何か? 推測ですとこんな感じになってくるのだと思います。
ユヅの実家は、ユヅを売った後もお金に困るような状況でした。もしかしたら、志磨家にうまいことやられて、苦しい状況に追い込まれてしまったのかもしれません。
『珠彦と別れるならお金を工面してやる』
『このことを珠彦に言ってはいけない』
ということを言われたのではないでしょうか。だから、ユヅは黙って理由を説明することなく出て行ったのだと思われます。
志魔家の使いと思われる者がやって来た時、家にリョウが来ていました。ということは、リョウは会話の内容を聞いていたはずです。
しかし、ユヅはリョウに『誰にも喋らないでほしい』と口止めします。喋ればユズの家に援助しないという約束になっているからです。ユヅは自分の両親を守るために、珠彦の元を去ることを選びました。そして、リョウも家族を大切にするユヅの気持ちがわかるため、珠彦に喋ることが出来ずにいる・・・・・という状況なのかなと。
しばらくはまたユヅ不在の物語が続くのかもしれません。いや、むしろユヅの方の視点でやっていただきたいものです。『大正処女御伽話』なわけですから。さてさて、どうなることやら。
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