◆前回のあらすじ◆
関東大震災で重傷だった兄の珠樹が亡くなりました。葬儀のために東京の実家に戻る珠彦。よほど悲しみが大きかったのか、まるで小さくなってしまったかのように見える父。そして、父は珠彦に死人扱いして悪かったと謝罪するのでした。
12月31日はユヅの誕生日です。珠彦は前もって用意していた『スズランのコンパクト』をユヅにプレゼントします。そのコンパクトに込めた想いは2つ。1つ『僕にたくさんの幸せをありがとう』、そしてもう一つ『僕の妻として幸せにさせてください』。それを聞いて、ユヅはとても感激するのでした。
しかし、その次の日・・・・・ユヅは置手紙を残し、いなくなってしまっていました。
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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
ユヅがいなくなって・・・・・
1月1日。珠彦が目を覚ましたころにはユヅいなくなってしまっていました。
置手紙にはこのように書かれてあります。
今までお世話になりました
ありがたうございます
何卒御達者で、さようなら
ユヅ
珠彦には、なぜユヅが出て行ってしまったのかがわかりません。ユヅがどこに行ってしまったのかもわかりません。
考えて考えて、悩んで悩んで、自分に悪いところがあったからなのだろうと悔やんで、自分を責めて・・・・・、しかし、どうすることもできない。
そんな状況が丸2日と続きました。
ジリリリリ!
ジリリリリ!
電話が鳴り響きます。
珠彦はもしやと思い電話に出ます・・・・・が、それは神戸の叔父さんからでした。
自分たちの病気が治り、看病してくれていた珠子が今そちらに向かっているからという連絡の電話だったのです。
珠彦は落胆し、電話を置きます。
珠代がココにやってきていた
ドンドン・・・『こんにちはー』
玄関を叩いて、やって来たのはリョウでした。新年の挨拶と東京の浅草へ行っていたため、お土産を持ってきたのです。
ユヅはいるかと聞かれた珠彦は、いないと答え、リョウに事情を説明します。
珠彦
『31日に二人で誕生日を祝ってさ』
『ユヅもとっても喜んでくれた』
『なのに、次の日になったら』
『手紙を置いていなくなってしまったんだ』
それを聞いたリョウは、もしかしてあのことが理由なのでは・・・・・と考え、そのことを珠彦に説明します。
リョウ
『珠彦が兄さんの葬式に行った日』
『二人で太巻き作ってるときに人が来たんだ』
ユヅは玄関の方へ。しかし、しばらくしてもユヅは戻ってきません。
リョウは気になって玄関の方へ向かうと、話声か聞こえてきました。
???
『そーゆーわけだから
『あなたの役目はこれでオシマイ』
『三年間、珠彦ちゃんのために御苦労様でした』
思いがけない話にビックリしたリョウは割って入ってきます。
珠彦の姉を名乗るその人物。
珠代
『あとはご自分の胸でよ~~~く考えて』
『行動なさいね』
『考えるまでもなさそうだけど(薄ら笑み)』
『期待してるわよぉ、夕月ちゃん』
そう言って、珠代は帰っていきました。
黙っていてほしい
心配してリョウがユヅの顔を覗き込んでみると、ユヅの顔は真っ青になっていました。
リョウ
『ユヅ? どうしたの顔が真っ青よ』
『一体あの女に何言われたの?』
『ご苦労様ってどういう意味?』
リョウがそう尋ねると、ユヅはこのように応えます。
ユヅ
『どうかこのことは胸にしまっておいてください』
『お願いします、どうかこのとおり・・・・・』
『お姉さまに意地悪されたなんて知られたら』
『恥ずかしいですもの』
ユヅは少し笑いながら、何でもなさそうにとりつくろいます。
話を聞いた珠彦は思います。
珠彦
(ああ・・・また志磨(うち)か)
『ちょっと東京の志磨の家へいってくる』
『リョウはこのまま家にいてくれないか』
『珠子が来るみたいだから』
そう言って、珠彦は汽車に乗り、東京の実家へ向かいました。
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珠代の脅し
お風呂に入っていた珠代。
そこへ、千葉からやって来た珠彦がやってきます。
珠彦は単刀直入に『ユヅを帰してください』と伝えますが、珠代は意外なことを言いだします。
珠代
『もう夕月ちゃんはいいのよぉ』
『アナタにはもっとふさわしいお嬢さまと』
『縁組してもらうから』
珠彦には別の結婚相手が用意されると言うのです。
珠代は、ユヅをどのように説得して珠彦の元を去らせたのかも説明します。
珠代
『ここだけの話だけど』
『父があなたの家族の事しらべてね・・・』
『とーっても面白いことがわかったわよ』
『貴方のお母さま』
『今妊娠してらっしゃるんですってよ』
そう言って、ユヅの母親が身ごもっている写真をユヅに見せます。ユヅはその写真を見て、久しぶりのお母さんと、新たな命が誕生することにとても喜びます。
珠代
『弟と妹、どっちかしら、楽しみね』
『今のうちにいう事聞いといた方がいいわよ』
『うちの父、逆らう人間には容赦しないから』
『貴方のお母さま・・・・・』
珠代
『それから人が変わったように』
『しおらしくなっちゃって』
『分かりやすいわよねぇ』
珠代はそうやって、ユヅを脅迫したのです。
珠代
『大切なモノなんて持つから』
『我が通せないのよ』
『我を通したかったら』
『大切なモノなど持ってはダメ』
『首枷にしかならないのだから』
『私達、そういう風に育てられたものね』
『珠彦ちゃんもよぉくわかってるハズよぉ』
御伽話は終わり
そのことは志磨家で生きてきた珠彦もよくわかっていました。
それでも、珠彦にとっては、ユヅと一緒にいた時間はとても、かけがえのない物なのです。
珠代
『それはこの世のしがらみから』
『離れた世界にいるから言えるのよ』
『人と関わることなく衣食住の心配もない』
『そんな所でなら誰だって心から人を愛せるでしょうね』
『何てステキな世界』
『まるで「御伽話」だわ』
『御伽話の出来事なら』
『愛なんてまやかしも貫けるでしょうね』
『でもね、珠樹兄様が身まかられて状況は変わった』
『珠彦、貴方が志磨の次期当主となるの』
『御伽話は幕』
『現(うつつ)に戻ってらっしゃい』
話を聞いて、珠彦は全てを理解します。
学校に行けることになったこと、葬式の時に皆が優しかったこと、ユヅが出て行ってしまったこと、それは全て珠彦をこちら側に引き込むために仕組まれていたことだったのです。
ユヅと過ごしたあの日々は父親によって用意された歪んだ世界だったのかもしれない・・・・・。それでも、ユヅと過ごした日々は・・・・・。
珠彦
(もう終わりにしよう)
(また志磨かとか)
(父さんがとか、姉さんがとか、うんざりだ)
(父さん僕は羅刹(おに)としてではなく)
(人として生きたい)
(だから・・・・・)
珠彦
(あの父の事だ・・・)
(僕をいうとおりにするために)
(ユヅを利用するはず)
(それなら・・・・・)
(この志磨の家のどこかにユヅがいるはずだ)
(待っててくれユヅ)
(必ず助けに行くから)
ユヅがいる場所
珠彦の弟の珠央がいる部屋。
そこへ使用人がやって来て、珠彦が屋敷にやってきたことを報告します。
誰かに膝枕をしてもらい、頭をなでてもらっている珠央。
珠央
『こんなトコロ珠彦が見たら』
『どんな顔するかなぁ』
『ね、ユヅ』
珠央はそう言って、ユヅに邪悪に微笑みかけるのでした。
◆感想◆
◆珠代の鼻歌
お風呂場で珠代が歌っていたのはコトリちゃんの歌ですよね。
これはつまり、『珠代の心を動かせるのがコトリちゃん』という伏線という事なのかもしれません。
◆5巻で連載終了?
何だか最近のストーリー展開は駆け足気味であるように感じられます。何より、志磨家なんてものは、この作品におけるラスボスにあたるわけです。ユヅも人質のごとく奪われてしまいましたし・・・・・。
単行本は一冊当たり5ヶ月分ほど収録されています。今回の第31話は第5巻分の内容。そうなりますと・・・・・もしかしたら残された連載期間は4~5ヶ月分という事になるのかもしれません。
予想が外れていればいいのですが・・・・・。
◆(オリジナル)『坊ちゃんなら大丈夫!(前編)』
ちょっとしたオリジナルのジョークストーリーを作ってみました・・・・が、結果的にダークストーリーになってしまったような気がします。
今回、『前編、中編、後編』の前編を公開してみます。よかったら一読ください。
◆(前編)坊ちゃんなら大丈夫!
https://mangakansou.xyz/archives/7172
◆(中編)目を覚ました怪物!
https://mangakansou.xyz/archives/7509
◆(後編)尋常ではない!
https://mangakansou.xyz/archives/7885
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珠代姉さんが、ユヅに話した内容は… ①脅迫(殺害予告)②殺人教唆(父に殺害を勧める)ですよね。明らかな犯罪です。危なすぎる工作なので、使用人を使わず、一人で千葉別荘までやってきたんですね… それも主犯格として…
ユヅ実家に金銭的圧力のみならず、殺害まで工作するとは、志摩家の財力は治外法権を生んでいるのでしょうか?この中に、珠彦もユヅも捕えられているのであれば、救出する方法は、珠介叔父宅へ逃げるしかないように思います。
しかし実弟・珠央が跡継ぎとなった場合、その地位を安定させるためにも「ユヅ人質」「ユヅ虐待」は必要な手段に思います。
①虐待の一例として、ユヅ部屋に首つりロープを張り、楽になる方法と教える。
②実際にはロープが切れ、呼び鈴が鳴り、自殺できない。このような虐待を繰り返す。
③珠彦への信頼や愛情を狂わせ、魂をくり抜き、羅刹の思念に染める。
④珠央が信じない、手に入れられない「真実の愛」を、御伽噺と証明する。
⑤将来、珠央が珠彦に「アレを取られた事を根に持っているのか?」と言い放って、志摩家に近づかない、刃向わないように防壁を巡らせておく…
残忍な羅刹の一族がやりそうな手段ですね。
ただ、珠彦は志摩家の危険人物として徹底的に追い詰められる可能性が高いので、珠介叔父さんへ逃げれば、反志摩家一網打尽の憂き目にあう可能性があります。完全な平和(安全保障)を得るためには、志摩家改革が必要であり、そのためには自らが当主となって財政的実績の上で、旧来の仕来りを改める… とても気長い順番となるでしょう。その過程で、ユヅの身分保障はどうなるのか?正妻として迎え入れられる日がくるのか?それとも、父のように3人の妻の一人として組み込まれるのか?
そもそも、父はユヅ母とどのような関係だったのか?第一子を殺害工作し、第二子を志摩家に借金の形として奪い、第三子の命さえ奪おうとする… どれだけ執念深いのか?その理由な何なのか? 天真爛漫なユヅに比較して、志摩家は闇が深すぎる…
この鬼が島となっている志摩家に、どのような展開があるのか?そそうをしても温かく介護された珠子の様な単純な展開ではとても打開できそうにない。何によって鬼は仏に生まれ変わるのか…
この様な羅刹ギミックが組み込まれた志摩家に、珠彦・ユヅを引き込んだ、実姉・珠代の狙いは「かわいそうな物語をまじかで見る」ことにあるのでしょう。父も実弟・珠央を巻き込んで志摩家内部で繰り広げられる惨劇を目前でゾクゾク楽しむ珠代姉… 彼女にとって志摩家跡継ぎがどうなろうと関係なく、怨念渦巻くドラマを楽しみたい… それだけに思えます。そして真の愛など、脆いもので御伽噺でしかないと再確認する…
コミック3巻が、関東大震災ユヅ救出劇であったから、コミック5巻が志摩家呪縛ユヅ救出劇となるのですが、6話程度であの羅刹の一族を打破できるものなのか、どうか… 本当に疑問です。
本当の希望は、羅刹を避け、ほんわかした大正処女ストーリーを、「さざ○さん」のように、時が止まった世界で永遠に続けてほしい… それが僕の願いなのですが…
31話で、志摩家は財力・権力・暴力の独裁者として社会に君臨し、目的達成の為には殺人工作さえ厭わない、文字通りの羅刹の一族であることが明るみにでました。
そうなると、大正10年9月1日の珠彦と母:透子の二人が乗った自動車の事故… これさえ事故とは思えない。母の葬儀で弟:珠央が珠彦に暴言を吐き、母の死を嘆いたのは、どこまでが演技なのか?本当は誰を始末する予定だったのか…
姉:珠代は、珠彦を次期当主として志摩家に迎え、珠央と激突させることで両者を共倒れさせ、珠代自身の相続権を確保するのではないか?と思える。それに目前で惨劇が繰り広げられる様は、彼女にとってこの上ない快感なのであろう。
珠彦は志摩家を断ち切ると語っていますが、ユヅと珠介叔父さん宅へ逃げ込むことは、珠代の想定範囲であり、反志摩家派閥が一塊となることで、一網打尽されてしまう危険性があります。逃げても無駄であるとしか思えない。
この窮地で、問題はユヅの心的ダメージ具合がどれ程であるかですが、珠代脅迫で震えていた姿から、志摩家・珠央お世話時点では、魂が抜け落ちた状態に陥っているように思う。
彼女が、更に珠央に犯される状況に進めば、本作のレッドラインを超えてしまうので、なんらかの「商品としての保護」が働いていると思われます。それほどに志摩家・次期当主の権利は絶大であり、それをコントロールするためのユヅ人質であろうと思われます。
さて、この環境で、どの様に物語を進めていくのか?6話程度で、志摩家決着をつけるとなると、隠された要素が次々に出てこないと、珠彦一人では勝てる要素が無い。
志摩家があまりにも残虐で染められていて、肝心のユヅ笑顔が見れない展開では読者が持たない。緩和策として3巻にあった「ユヅ語り・実家編」とかが展開されるなかで、解決の糸口が見つかるのだろうか?
志摩家の小ボス:珠央 中ボス:珠代 ラスボス:父 の順で倒すとなると、1話づつで撃退?…できるのか? まさかと思うが「全て珠彦の夢オチ」でした…なんて粗末な結論にならないことを願わんばかりであります。