◆前回のあらすじ◆
この屋敷の中に必ずユヅはいる。そう確信する珠彦は屋敷の中を探し回ります。そんな珠彦の前に現れたのが弟の珠央。ユヅの元へ案内してあげると言うのです。
珠央に案内された部屋に、ユヅはいました。珠彦は一緒に帰ろうと言いますが、ユヅはそれを拒みます。ユヅは珠彦から身を引かねば里の母親とお腹の赤ん坊が・・・と脅しをかけられていたのでした。そして、珠彦に対しても苦しめると承知の上で未練がましい手紙を残してきてしまいました。
説得しても聞き入れてくれそうにないユヅ。珠彦は自暴自棄となり、珠央に果物ナイフを渡して自分を刺し殺すようにと伝えます。それを聞いて、ユヅは慌てて止めに入ります。そして、本当は珠彦と一緒になって幸せになりたい。そう言って、珠彦の胸の中で泣きじゃくるのでした。
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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
志磨を捨てる
珠彦が屋敷に戻ってきていると聞いた父親は、珠彦の元へやってきます。
父親
『戻ったか珠彦』
『何だか前よりさらに良い面構えになったな』
そんな父親に、珠彦は言います。
珠彦は、ユヅと結婚し、そして世のため人のためになる仕事をしていきたいと言うのです。
しかし、父親はその考えを否定します。珠彦は右腕が動きません。何より、今までお金を稼いだことも無い珠彦がやっていけるはずは無いと考えているのです。
父親
『しなくていい苦労をするな』
『志磨家を継げば食うには困らない』
『もっと世の中を知れ』
『さすれば他人のために働くなんて』
『愚かだとわかる』
『人間の本性こそ』
『この世で一番諸悪なモノだ』
『だから他人など利用するだけしてやればいい』
『どうせ人間など札束を見せれば』
『怒りや憎しみなどすぐに忘れてしまうからな』
父さんが志磨を継いだ未来の僕の姿
珠彦
『父さんが仰ることは正論かもしれない』
『確かに今の僕は経験もなく』
『世の中をよくわかっていない』
『でも・・・一つだけわかったんです』
『今の父さんが志磨を継いだ』
『未来の僕の姿だと』
珠彦
『僕も昔は父さんと同じ考えでした』
『もし・・・事故に逢わずにいたら』
『父さんの言いなりになって』
『兄さんの代わりに志磨を継いだでしょう』
『僕の人生の唯一の僥倖は』
『夕月に出逢えたことです』
珠彦
『他人から見れば御伽話のように見えるかもしれない』
『でも、ぼくはこの素晴らしい日々に』
『体も魂も救われたんです』
『ユヅの為ならまた現に戻ろうと』
『もう少し頑張ってみたくなってしまうほどに』
『父さんにも・・・・・』
『こういうものを与えてくれる人がいたら』
『良かったのに・・・・・』
父さんの想い出
珠彦にそう言われて、父親は子供の頃の事を思い出します。
父親は幼いころ、とても貧しい家の子供でした。しかも、両親は冷たく、わずかに入手できた食糧でさえ子供である自分たちには与えてくれず、隠れて自分たちで食べていたのです。
そんな父親(珠義)にいつも優しくしてくれていたのが『雪ちゃん』でした。
雪
『珠ちゃんったらせっかく奉公先から』
『久しぶりに帰ったのに、お勉強?』
珠義
『偉い人になりたいんだ』
『奉公してオレわかったんだ世の中金だって』
『金持ちになるには学がいる』
『だから勉強してるんだ』
『・・・それに・・・・・』
雪
『何?』
『教えて!』
珠義
『金持ちになったら』
『雪ちゃんをお嫁さんに・・・・・』
それから数年後・・・・・
雪は後添い(後妻)として大店の旦那さんと結婚することになりました。
珠義は雪の側に駆け寄ります。
珠義
『雪ちゃん!!』
雪
『御達者で』
最愛の人がお金持ちの人と結婚してしまった。
このことがきっかけとなり、珠義(父親)はより一層、お金に執着するようになったのです。
ユヅが珠彦の元へやって来た理由
ある日、志磨家に一人の女子が押し掛けるようにやってきました。
叔父夫婦が夜逃げして、借金を背負わされた夫婦の娘です。
借金を抱えて苦しんでいる両親のために、自分を買ってほしいと申し出ているのです。
ユヅ
『お願いでございます!』
『私を買ってください!』
『死ぬまで働きます!』
『どんなことだってしますから』
『お願いします!』
19年間ありがとうございました
昔の事を瞬時に思い出していた父親。
父親
『わかった、もう止めはしない』
『どこへでも好きな所へ行くがいい』
『ただし、夕月くんんは置いていくんだ』
『彼女は元々私が一万円で買ったんだ』
『だが、お前が私の言うことを聞いて志磨を継ぐなら』
『正妻を迎えた後、夕月くんを妾にしてもいいぞ』
それを聞いた珠彦は、その場で『借用書』を書きます。
珠彦
『死ぬまで働いて』
『必ずお返しいたします』
『左手一本でも』
そういう珠彦を見て、ユヅも一緒になって言います。
ユヅ
『珠彦様の左手一本だけではありません!』
『私の手も合わせて、3本です!!』
こんな大金返せるはずは無いと言う父親の言葉をさえぎって、珠彦は続けます。
珠彦
『父さん』
『僕は、父さんに感謝しています』
『あの別荘に住めたおかげで』
『出逢えた人たちがいて』
『珠子と仲良くなって』
『学校に行かせてもらって、友達もできた』
『全ては父さんが僕と』
『夕月を引き合わせてくれたからです』
『19年間ここまでで育ててください』
『ありがとうございました』
『僕はもう死んだものと思ってください』
『でもどこかで必ず幸せになります』
『父さんも何卒・・・・・』
その言葉を聞いて、父親は自分の元を去っていった雪のことを思い出します。
父親
(感謝の言葉など聞いたのは)
(何十年ぶりであろうか)
(これならまだ恨み言を)
(浴びせられた方がましだったな)
(御達者で・・・・・か)
(これでは金があっても無くても、同じだな)
やってきた仲間たち
もう夜の9時。
今から家を出れば最後の汽車には間に合うかもしれないかという時間帯。
そんな時、志磨家へ、珠子、リョウ、小鳥、策の4人が飛び込んできました。珠彦とユヅの事が心配で駆けつけてくれたのです。
皆に囲まれる珠彦を見て、父親は思います。
父親
(私にも、あんな人生があったのかもしれないのか)
(・・・もう遅いけどな)
◆感想◆
◆一区切り・・・なのかな?
長引くのかなぁと考えていましたが、意外とすんなり一区切りって感じのようです。
これからが大変なんだろうなという気もしますが、まぁ何とかなりそうな気もします。
◆住む家と学校は?
父親と決別してしまった以上、千葉の別荘に戻ることができません。これからどうするんでしょうね? 考えられる可能性としては・・・・・
(1)次回冒頭にて父親が妥協案を出す。珠彦もユヅもこれまで通りの生活が行える半面、父親が出したであろう何らかの条件の元、行動することになる。これが一番可能性が高いかなと、個人的には思っています。
(2)神戸の叔父さんの所に行く。どう考えても、助けてくれる存在は神戸の叔父さんしかいません。珠央のこともありますし、ここで何らかの進展があるかもしれません。
(3)小鳥ちゃんにお世話になる。お金を持っていると思われるのは小鳥ちゃんくらいかと。住む場所と、学校費用の援助を・・・・・常識的に考えたら他人をこんなに助けてくれるとは思えませんが。とはいえ、神戸に行っては学校に行けなくなりますので、珠彦的にはそれはそれで問題かと。でもやはり常識的に言って無さそう。
(4)今持っているお金で貧乏生活を行いつつ、アルバイト?のようなもので何とか生計を立てつつ、学校に行く。まぁ、現実的に考えてこれはかなり無理があるかと。
以上、4つになってくるものと思われます。
◆ラスボスは球代?
今回の話で、父親もそれなりに大変だったんだろうなぁということがわかりました。何より、人としての情は持っているようにも思えました。珠央はすっかり丸くなってしまった印象です。
そうなりますと、どうしようもなくやばい存在になってくるのは姉の『珠代』になってくるのではないでしょうか。珠代は救いようのないやばそうな雰囲気鹿ありません。
父親は『まともな過去』があったからこそ、珠彦の言葉が届いたのだと思います。
しかし、珠代にそれがあるのかどうか。もし『愛情』というものをまったくもたない状況で、歪んだまま成長してしまったという事なら、『無理』に近いくらい言葉が届かないようにも思えるんですよねぇ。唯一、それが出来そうなのは、やはり父親くらいになりそうです。まぁまだまだ今後の展開は謎だらけですが。
◆本編とは関係ないオリジナルの完結
個人的に、3ヶ月にまたいで書いていた闇落ち珠彦の3部作ストーリー。今回で完結です。
◆(前編)坊ちゃんなら大丈夫!
https://mangakansou.xyz/archives/7172
◆(中編)目を覚ました怪物!
https://mangakansou.xyz/archives/7509
◆(後編)尋常ではない!
https://mangakansou.xyz/archives/7885
よければ、ご一読くださいませ。
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