大正処女御伽話のオリジナルストーリーです。原作とは一切関係ありません。
なお、原作よりもだいぶダークな内容にしております。原作のイメージを大事にしたい方は、引き返してください。
(前編)坊ちゃんなら大丈夫!
(中編)目を覚ました怪物!
(後編)尋常ではない!
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◆大正処女御伽話◆
1巻(1話・2話・3話・4話・5話・6話・7話・8話)
2巻(9話・10話・11話・12話・13話・14話・15話・16話)
3巻(17話・18,19話・20話・21話・22話)
4巻(23話・24話・25話・26話・27話・28話・29話・30話)
5巻(31話・32話・33話・34,35話・36,37話・最終話)
(後編)尋常ではない!
いつからだろうか・・・・・珠彦が、あのような人間になってしまったのは・・・・・
志磨家が長身の家系であるからなのか、珠彦は大人の女性にはまったく興味を示すことはなかった。逆に、尋常の小学生に対してのみ異常なほどに執着心を持つようになったのだ。
次第には『12歳を超えたら年増』などと得意げに語りだす始末。恥ずかしながら、私は父親として、珠彦が何を考えているのかまったく理解できない。
後で分かったことなのだが、学校帰り、いつも尋常小学校の校門前でウロウロしていたようだ。尋常から帰宅する童女たちをジッと眺めては、家に帰ればイカガワシイ本を読みふける日々を送っていたとか。おぞましい限りである。
そんなある日、仕事場に連絡が入った。珠彦がケイサツに捕まったと言うのだ。
私は慌ててケイサツ署へ駆けつけた。そこには、うなだれる珠彦がいた。ケイサツから事情を聴いてみると、珠彦は尋常小学校の敷地内に勝手に侵入していたというのだ。不審に感じた一人の教師が声をかけてみたところ、珠彦は『ボクは新任の教師だ!』などと答えたとか。
その場で取り押さえられ、今に至ったというわけだ。
父親
(このままでは大変なことになる・・・・・)
私は毎回、珠彦を尋常小学校に連れて行っているという使用人の運転手を不審に思い、急きょ、別の使用人に変更することにした。
しかし・・・・・結果として、それがアダとなってしまった。
数日後、変更した使用人は交通事故を起こしてしまったのだ。妻は亡くなり、珠彦は右腕を負傷した。私は・・・・・最愛の妻を失ってしまったのだ・・・・・。
妻を失ったショックから、私は抜け殻のようになってしまった。もうこれ以上、珠彦と向きあうだけの気力を保つことはできない・・・・・。だからと言って、あの珠彦を放置するわけにもいかない・・・・・。
そこで、私は深謀遠慮をはかることとなった。
まず、『珠彦を千葉の別荘へ追放する』ことに決めた。田舎にひっこめれば、イカガワシイ・セイヘキをどうにかできるかもしれない・・・・・。そう考えたのだ。
とは言っても、追放しただけでは、決め手に欠ける。そこで打った次の手立ては『嫁をめとらせる』というものであった。珠彦も結婚すれば落ち着いてくれるに違いない。そう信じたのだ。
そこで私は厳正なる人選を行ったうえで『夕月』という女子が最も適任であると判断した。夕月は当時13才でありながら、身の丈がとても低かったのだ。年齢は尋常ではないが、尋常にしか見えないほどであった。夕月の家族も身の丈が低い。ならば、これ以上、背が伸びる可能性は低いと考えられるであろう。
この娘なら・・・・・尋常ではないが、尋常にしか見えないこの娘ならば・・・・・珠彦をどうにかできるかもしれない!!
私は夕月に珠彦のセイヘキを洗いざらい説明した上で、婚約をお願いできないものかと頭を下げた。それに対して、夕月は珠彦のことを全てを理解した上で、珠彦の元に嫁いでもかまわないと言ってくれたのだ。
父親
『ありがとう! ありがとう! ありがとう!!』
私はただただ、夕月に深く深く頭を下げて、泣いた。
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それから2年後の元旦・・・・・
夕月さんは、志磨家に飛び込んできた。いや、逃げてきたと言うべきか。夕月さんは泣きながら私に語った。千葉で珠彦に何をされたのかを。それはまさに、想像を絶するものであったという。
これ以上、夕月さんを珠彦のイケニエにはできない。私は夕月さんを珠彦から守ってあげることにした。
それから数日後・・・・・、志磨家に珠彦が訪れた。
圧倒的なるプレッシャー。珠彦はたった2年で、ここまで進化してしまったというのか!? 私は恐れおののき、その場で珠彦と向かい合うだけでやっとであった。
こんな珠彦に、夕月さんを差し出すわけには行かない!
私は、屋敷の中で夕月さんをかくまうことにした。珠彦を夕月さんがいる部屋に近づけさせなければいい。多くの使用人が監視している。下手に外に出すよりも、屋敷でかくまう方がはるかに安全だと考えたのだ。
珠彦はそれからずっと、屋敷にとどまった。夕月さんの元へどうにかいけないものかと考えているようであったが、私は二重、三重の策をもって、夕月さんの元へは近づけさせなかった。数ヶ月、そして1年と夕月さんを守り抜いた。
大丈夫だ! 夕月さんを守り続けることができる! 私はそう安心しきっていた。
しかし・・・・・私は気づくのが遅かった。珠彦の真の狙いは夕月さんではなかったのだ。夕月さんが目的であると私に思い込ませていただけなのだ。
珠彦が屋敷にやって来た本当の狙い・・・・・、それは私があてがった『夕月さんという「偽物」』ではなく『尋常という名の「本物」』であったのだ。
私が『珠彦がしでかしたその事実』を伝え聞いた時は・・・・・もう取り返しのつかない事態に陥ってしまっていたのだ・・・・・・・。
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それからどうなったのか・・・・・、現代には記録が残されていない。国は史実からその記録を完全に抹消してしまったのだ。
ただわかっていることは、それから数年後『尋常小学校』と言う名称が変更されてしまったという事。そして志磨家は完全に無くなってしまっているという事、である。
・・・・・・・誰が言い出したのだろうか。
異常な事件が起こるたびに、皆は口をそろえるかの如く『尋常ではない!』という言葉を使うようになった。
尋常ではない・・・・・、それは、人々が『かの人物』から大切な存在を守るために唱えられた唯一無二の『呪文』だったのかもしれない・・・・・。
(終わり)
◆あとがき
冷静に考えてみますと『長身の家系』であり、『ヒロインが小さい』となりますと、『ワーキング』しかおもいつかなかったわけでして。結果として、珠彦をロ●コン設定にせざるをえませんでした。ワーキングはアニメ1期、2期はみましたが、3期は見忘れてしまってよくわかりません。
また、私はこの作品(大正処女御伽話)を通じて、大正時代に小学校が『尋常』と呼ばれていたことを知りました。私が知っている『尋常』と言ったら『尋常ではない』くらいでして。『尋常小学校』と『尋常ではない』は何かつながりがあるのかな、などと思ったものです。
これらを元にして思いついたのが今回のストーリーとなります。
なお、少々、珠彦の顔で遊びすぎたかなと思っています。元々顔をいじる予定ではなかったのですが、『父親が震えあがる』ほどの絵でもないなと思いましたので、若干笑みを浮かべている程度に口をいじろうと思ったんですよ。
それがなかなか素人の手書きだと上手く口を描くことが出来なかったため、『悪い笑み』を浮かべている画像を探して取りつけてみました。
なお、今回使用したのは艦これの金剛さんの口です。
いやぁ、素晴らしい口だと思ったのですが、珠彦には少しオーバーだったかもしれません。でももう面倒なので、これでいいやと(笑)。
以上、思い付きで何となく作ったストーリー3部作でした。
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